あの野獣とヒッピーを合わせ持ったような風貌のカルロス・サンタナが、髪をバッサリと落としてこざっぱりとした身なりで、ジョン・マクラグリンと並んで写るこのLPジャケットが「LOVE DVOTION SURRENDER」1973年の作品です。
'Evil Ways' 'Soul Sacrifice' 'Oye Como Va' 'No one to Depeed on' などのラテン・ロックをかき鳴らしてきた同じギターリストとは、とても思えない変貌ぶりの衝撃的なレコードなのです。
その1曲目はジョン・コルトレーンの「A LOVE SUPREME」(至上の愛)を、マクラグリンとコラボしたもので、サンタナ転換期の大きな軌跡でもあります。スピリチュアルな思想から神への感謝の意を込めたコルトレーンの音楽美を、二人のギタリストがオリジナルに近い演奏で繰り広げています。
マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンに傾倒して行ったカルロス・サンタナのルーツはラテン・ロックなんでしょうが、彼が追求する音楽はジャンルに囚われない貪欲な世界観があるものと思われます。中南米・メキシコ・そしてアフリカへとカルロスの探究は続いていきます・・・
2曲目の「NAIMA](ネイマ)もコルトレーンの曲です。オリジナルはコルトレーンの「live at the village vanguard again」にも収録されています。タイトルは同じでも原曲は15分弱という長い曲です。LOVE DEVOTION SURRENDERでは、アコースティック・ギター2本でじっくり奏でてますが、かなりコルトレーンとは違います。
3曲目の「THE LIFE DIVINE]」と次の「LET US GO INTO THE HOUSE THE LORD」は二人のギター競演が思い切り楽しめるナンバーです。カルロスのギタートーンもデビュー当時の官能的なトーンから、大きく変化しているのがここではっきりわかるでしょう。1969年ウッドストックではGIBSONのSGスペシャル、1970年代前半はGIBSON レスポール・デラックスを愛用してましたが、LOVE DEVOTION SURRENDERではL-6Sを使用したかと思われます。
このL-6Sには「不死蝶」の青いアルバム・デザイン柄にヒンズー教の導師スリ・チンモイの顔写真が貼られたとてもアートなギターです。カルロスはよく敬愛する人物のTシャツを身につけてステージに立ちますが、精神的にも近づきたいのかも知れません。
さて、音楽に戻りますが、Let us Go to into The House of The Lord(神の園へ)は16分にもおよぶインストロメンタルで、かなりマクラグリンの影響を受けた仕上りとなっています。しかし、「Samba Pa Ti」をアレンジしたフレーズも時より覗かせながら、やや昔を振り返るカルロスのソロは、あの頃に未練があるのかと感じさせられるところがまた嬉しいですね。
サンタナはこの「LOVE DEVOTION SURRENDER」後、新メンバーで「ウェルカム」のレコーディングに入ります。私が初めて買ったサンタナのLPは、その「ウェルカム」でした。