McInjunの日記

音楽と写真のブログです。

MILAGRO ☆ santana

1992 Polydor 513 197-1
 

サンタナの数多いアルバムの中でもこの「MILAGRO」は、今まで聴いてきたサンタナサウンドから脱皮した新しいものを感じられます。(1992年)

実はこのアルバム、カルロス・サンタナにとって二人の偉大な人物への追悼アルバムなのです。そのうちひとりがSANTANAの育ての親でもある「ビル・グレアム」(プロモーター)です。彼はモンタレー・ポップ・フェスティバルやウッドストックライブ・エイドなどのロック・フェスやチャリティ・イベントをプロデュースしロックを支えてきたプロモーターでした。そしてもうひとりが、ジャズ界の帝王「マイルス・ディビス」なのです。この頃のカルロスのプレースタイルはマイルスに似たようなポーズがしばしばステージ上でみられます。音楽性は全く違いますが、マイルス・ディビスはかなりカルロスに影響を与えていたと思われます。
 
さて、「MILAGRO」に戻りますが、冒頭で触れたように、従来のサウンドから区切りをつけようとする何かが、このアルバムには感じられます。そのひとつとして、レコード会社がCBSからポリグラムに変わった事も、多少影響しているのかも知れません。
それでは曲の方ですが、1曲目はビル・グレアムの懐かしい声でサンタナバンドを紹介。タイトル曲のMILAGROですが、キーボードのチェスターの味付けがやや濃く、ライト感覚な仕上りでニューサンタナバンドを感じさせます。
 
 
2曲目はSOMEWHERE IN HEAVEN。天にでも登るような美しいギターとボーカルによってノックダウン寸前だが、カルロスのディストーションを効かせた激しいギターソロが突然鳴り響き、現実に引き戻されます。続くチェスターのソロもカルロスを引き継ぐが、ボーカルのアレックスが再び天国へ導きます。それにしてもカルロスのギターはどこまで美しいのでしょう。
3曲目はSAJA/RIGHT ON。ラテン・ビートのティンバレスに乗ってカルロスのギターが自由奔放に合いの手を入れる。後半はマービン・ゲイのRIGHT ONへと繋がります。
A面最後を飾るのはYOUR TOUCH。コンガの乾いたリズムにカルロスのつぶやきのようなフレーズのギターとボイスから始まりますが、曲を支えるチェスターのシンセ・サウンドは、晩年のマイルスを想わせる仕上がりをみせてくれています。
 
B面1曲目はLIFE IS FOR LIVING。とてもポップで明るい色調のボーカル曲で、カルロスのギターもややディストーションを効かせながら伸びのびとプレーしています。
しかし、歌の内容はアパルトヘイト撤廃、南アフリカの解放を題材としてます。
2曲目はRED PROPHETというインスト曲。パーカッションのリズムが変わっていて不思議な音楽だが、キーボードのソロに続き、それをカルロスが引継ぐが、畳み掛けるドラムのリズムにギターが絡みつきます。
3曲目は本場ラテン!コンガの乾いた音が最後まで響き、あのアルマンド・ペラーサが懐かしい。
そして4曲目はMAKE SOMEBODY HAPPY。なんと美しい曲なんだろう。こんなのライヴでやられたらノックアウトされてしまう。誰もが幸せでありたいと願う気持ちは不変であると、全世界に向けてカルロスのギターはメッセージを発しています。しかし、叶わぬことも多く悲観するフレーズも聴かれます。
そして続くFREE ALL THE PEOPLE(South Africa)は、南アフリカへの政治的メッセージとして「自由は権利だ」と歌われます。
6曲目のGYPSY/GRAJONCAは楽園的な平和な世界が描かれ、自由な生活を気ままに過ごしている様子が感じられますが、GRAJONCAに入ると曲は一転しカルロスのギターは変貌します。この差がサンタナバンドの魅力でもあるのですが、最後は楽園的気分に戻り曲は終わります。
WE DON'T HAVE TO WAITは、ためらうことなく急ぐんだ!と強いメッセージが感じられます。追い立て急かすリズムとギターに圧倒されます。
アルバムのラストは、A DIOS(さようなら) カルロスが敬愛したコルトレーンマイルス・デイビス、そしてビル・グレアムへの鎮魂歌です。じっくりと耳を傾けたい最終楽章です。
アルバムの裏面はそのマイルスとグレアムが写っています。