・アンネ・ゾフィー・ムター(Vn) ニューヨーク・フィルハーモニック
・指揮:クルト・マズア
ムター、マズア、そしてニューヨーク・フィルといった最高の組み合わせによるベートーヴェンのVn協奏曲です。ベートーヴェンの魅力を最大限に伝えてくれるアーティストたちによるベートーヴェン唯一のVn協奏曲。
第1楽章は同じ旋律を何度も繰り返され、ややもすると諄くなりがちな楽章かも知れません。それでも集中してしっかりと聞き込めば、それぞれのメロディのニュアンスや変奏、またはカデンツァなどが楽しめる楽章でもあります。勿論、演奏者ムターの技量によるヴァイオリンの音色も、微妙な感情表現の動向を聞き逃さぬようにしたいところです。
第2楽章のラルゲットは、やはり独奏ヴァイオリンの魅力を存分に味わえる美しい楽章です。このような曲を作曲したベートーヴェンの才能に、改めて感服するしかありません。
第3楽章の終楽章でベートーヴェン特有の「開花」を体験できることになります。聴く者を存分に高揚させ、音楽への歓びと幸福感を与えてくれます。そしてこの最終楽章では、独奏Vnとオーケストラが同化しながらも、やはりムターのヴァイオリンを際立たせ、クライスラーのカデンツァをしっかり聞かせてくれて曲は終わります。